フェイスブックは民主主義を壊すのか




どうも、SHU(@kitajimashuichi)です。

朝日新聞グローブの創刊10周年記念号というものに気になる記事が掲載されていましたので、自分用の記録を兼ねて紹介させて頂きたいと思います。

 

フェイスブックは民主主義を壊すのか

国境を越えて人が自由につながる世界を目指すソーシャルメディア。フェイスブック(Facebook)はその先駆けとして2004年に生まれました。2011年の「アラブの春(2010年から2012年にかけてアラブ世界において発生した、前例にない大規模反政府デモを主とした騒乱の総称)」で若者たちを結びつけ、民主主義を世界に広めた「希望のツール」は今、情報操作や監視に使われる負の側面も見せはじめ、民主主義を揺るがしています。


カンボジアで30年に渡り首相として強権的な支配を続けるフン・センのフェイスブックには日々、自らの日常を伝える投稿がいくつも並んでいます。支持者と笑顔でセルフィーを撮る現場視察。海外の要人と力強く握手を交わす国際会議。ゴルフを楽しむ週末。何も知らずに写真やコメントを眺めていれば、親しみや頼もしさを感じさせる内容で、多い時は数千個単位の「いいね!」もついています。

アメリカのPR会社が3月に実施した調査によると、世界の指導者や政府が個人や組織として立ち上げているフェイスブックのページは650件で、このうち、フン・センはクメール語(カンボジアの公用語)のみの発信にもかかわらず、インドの首相モディやアメリカ合衆国大統領のトランプらに続く5番目に多い合計960万個の「いいね!」を獲得していました。

しかし、別の調査会社の分析では、フン・センへの「いいね!」のうち、カンボジア国内からのものは4割しかないとのことで、カンボジアの地元の英字紙は2年前、フン・センが国外から「いいね!」を買った疑いを指摘しました。記事を書いた元記者のショーン・タートンによると「世論調査がないカンボジアでは『いいね!』は支持率と同じ。正当性が欲しい首相にとっては買ってでも手に入れたいものだ」と言います。

7月末の総選挙では、フン・セン率いる与党が下院の全議席を手に入れ、若者がフェイスブックで野党への支持を広げた5年前と対照的な結果となりました。投票日を前にフン・センへの講義のために投票ボイコットを呼びかけた野党関係者が罰金を科されるなど、フェイスブックは監視と検閲に利用され、与党批判は封じ込められました。人権問題を専門にするイギリス人弁護士リチャード・J・ロジャースは「独裁者が使えば、フェイスブックはウソとプロパガンダと恐怖を広める道具になる」と指摘しています。


フン・センが「いいね!」を買った疑惑が指摘されているインドは昨年、アメリカ合衆国を抜いてフェイスブックの利用者が世界一になりました。2億7000万人のユーザーがいる国内に加え、海外も市場にして「いいね!」を売る「マーケティング」が成長しています。

首都ニューデリーで、3年前から「いいね!」を売っているラジフ・アナンドによると、「いいね!」の価格は一つ1ルピー(約1.6円)で、フェイスブックであらかじめ集めた協力者をグループ化しておき、依頼主の投稿に「いいね!」をつけるよう一斉に頼むとのこと。これまでに政治家からの依頼も受けたとのことで、「投稿内容ではなく、『いいね!』の数に影響される人は多い。政治家が『いいね!』を欲しがるのは、それだけ好かれている人間に見せかけるためだ」と言います。

フェイスブックも偽「いいね!」の売買を問題視して対策を進めていますが、今も英語でグーグル検索すれば、「いいね!」を売る会社はすぐに見つかります。

オックスフォード大学の研究員サマンサ・ブラッドショーは2016年から2年間にわたって、世界各国の政治機関や政党によるソーシャルメディア上での情報操作や監視の有無について調べました。今年7月の報告書によると、前年より20カ国多い48カ国・地域で、世論操作にソーシャルメディアが使われていたとのこと。アフリカやアジアの途上国だけでなく、オーストラリアやドイツなどでも悪用の事例があったとのこと。政治家が人気を粉飾したり、極論を多数派の意見と誤解させたりする操作が増え、それがビジネスになっているといいます。「対策を講じないと、ソーシャルメディアは民主主義を壊してしまう」とブラッドショーは危惧しています。

新聞やテレビが権力から独立したメディアとして育つ前にスマホを手にした途上国の人々にとって、ソーシャルメディアの情報は時に破壊的な影響力を持ちます。

ミャンマーで起きている少数派イスラム教徒ロビンギャの迫害問題では、国連の調査団が8月の報告書で、ロビンギャに対するヘイトの拡散にフェイスブックが決定的な役割を果たしたと結論づけ、「多くのユーザーにとってインターネットとはフェイスブックだった」と指摘しました。ミャンマーでは昨年9月まで、フェイスブックといくつかの特定のサイトだけが通信量無料で使えるフェイスブックのサービス「フリーベーシックス」が提供されており、独占状態を生んでいました。調査団のメンバーが、「フェイスブックが獣に変わった」と話したこともあります。フェイスブックは今も途上国や新興国を中心に世界の60を超える国と地域で、「フリーベーシックス」の提供を続けています。


ハーバード大学の学生のためにつくられたネットワークは今、地球の人口の4分の1を超える22億人が使うプラットフォームに成長しました。フェイスブックは、世界を良い方向にも悪い方向にも動かせる力を得たようにすら見えます。

一昨年のアメリカ合衆国大統領選挙では、フェイスブックを始めとするソーシャルメディアがフェイクニュースを拡散する媒体になり、先進国にもその影響力は及んでいます。

民主主義を傷つけたり、世論をゆがめたりするような行動にフェイスブックは責任があると考えるか、メールでフェイスブックに送った質問への回答は、「コメントは差し控えたい」とのことでした。