不老不死は実現するか




どうも、SHU(@kitajimashuichi)です。

朝日新聞グローブの創刊10周年記念号というものに気になる記事が掲載されていましたので、自分用の記録を兼ねて紹介させて頂きたいと思います。

 

不老不死は実現するか

3年前、アメリカ合衆国カリフォルニア州リッチモンドに、アンチエイジング(抗老化)を目指すスタートアップ「バイオエイジ」を立ち上げたクリステン・フォートニーは、広々とした自社のオフィスで「仮にすべてのがんを克服しても、人類全体の平均寿命は4年しか延びない、という説がある。だけど、仮に老化を遅らせれれば、健康寿命を10〜20年も延ばせる可能性がある」と話しました。「だからこそ私は毎朝、やる気に満ちてベッドから出られる」と話します。

フォートニーは、カリフォルニア大デービス校をはじめ、多くの患者の血液や遺伝子のサンプルを保管する、世界各地の「バイオバンク」と協力関係を築いてきました。それらのデータをAIによって分析し、老化に関与する体内の物質に作用する薬を開発する、というのがバイオエイジのコンセプトです。

フォートニーは「人の老化はとても複雑で、多くの人々について、あらゆるデータを調べる必要がある。AIはそれにうってつけだ」と説明します。


ここ数年、アメリカ合衆国西海岸のシリコンバレーやその近郊を中心に、アンチエイジングのスタートアップが急増しています。電子決済サービス「ペイパル」の創始者ピーター・ティールや、「シンギュラリティー(技術的特異点)」に関する「予言」で有名な未来学者レイ・カーツワイルも、「老いや死は、科学技術の発展で克服できる」という主張を繰り返しています。

彼らと親交があるイギリスの生物学者オーブリー・デ・グレイは、「老化は決して避けられない運命ではなく、体に様々なダメージが蓄積された結果として起こる『病気」に過ぎない。人体のダメージを包括的に修復すれば、老化は治癒できる」と主張します。

デ・グレイはシリコンバレーに自ら立ち上げた「SENS研究財団」の一室で「アンチエイジングの研究を始めた1990年代半ば、私の考えをまともに取り上げる人は皆無だったが、今や状況は大きく変わった」と話しました。山中伸弥が発見したiPS細胞によって、傷んだ臓器や皮膚を再生する可能性が開け、生体の遺伝子を操作する技術「CRISPR(クリスパー)」も確立しつつあります。いずれもアンチエイジングのカギになる技術とデ・グレイはみています。

デ・グレイやカーツワイルが主張するのが、「寿命脱出速度(LEV)」という考え方です。もしも「60歳の人に30年の健康余命を与える技術」を確立することができれば、次の30年間に「90歳になった時点でさらに30年の健康余命を与える技術」が開発できるでしょう。それを繰り返せば、事実上の「不老不死」が達成できます。デ・グレイは「今後25年以内に人類はLEVに到達する」と予測しています。


デ・グレイやカーツワイルは、科学技術の可能性をあまりに過信しているのかもしれません。しかし、より現実的な見方をする事業家たちの間でも「有望な投資先」としてのアンチエイジング事業への関心が高まっています。

2016年、アメリカ合衆国の医薬大手ファイザーに140億ドルで買収されたバイオ製薬会社「メディベーション」の立ち上げに関与するなど、数々の製薬会社を成功させてきた起業家グレッグ・ベイリーは昨年、アンチエイジング関連の創薬と投資を目的とするスタートアップ「ジュヴィナーセンス(青春)」を立ち上げました。共同出資者・経営陣にはイギリスの著名な投資家やファイザーの国際開発部門元トップが名を連ねます。

ベイリーによれば、アンチエイジングの分野での重要な発見の大半は、過去5年間に集中しており、コンピューターの半導体にシリコンチップが使われるようになった時に匹敵する「爆発的な技術進化」がおきているといいます。「今、アンチエイジングに投資するのは、1998年の時点で、創立されたばかりのグーグルに投資するのと同じことだ」と断言しています。

すでに、アンチエイジングを実際の治療に活用する動きもあります。アメリカ合衆国の分子生物学者ビル・アンドリュースは、細胞の分裂回数を決めるDNA「テロメア」を伸ばす酵素「テロメラーゼ」を活性化させ、細胞レベルで若返らせる研究を続けてきました。アメリカ合衆国カンザス州で診療所を経営するジェフ・マティスは、アンドリュースの技術を用いて今年10月、コロンビアの病院で、アメリカ人の認知症患者を対象とする遺伝子治療を始めます。

「テロメラーゼを活性化することは、がんのリスクを高める」との批判もありますが、アンドリュースは「その批判にエビデンスを出せた研究者は一人もいない。逆にテロメアの短縮こそががんの原因」として安全性を確信しています。

東京大学の定量生命科学研究所教授・小林武彦は「生物は、がんのリスクを減らすために『細胞の老化の仕組み』を発展させてきた。仮に細胞の老化が抑えられてずっと分裂し続けると、分裂時の遺伝子複製エラーが蓄積され、さまざまな問題が生じるのでは」と懸念を示します。

その一方で、「近年の抗老化研究の進展は本当にめざましい。不老不死は無理でも、『100歳になっても、ゲートボールではなく、ゴルフができる』時代は間近に迫っているのでは」とも話します。