新時代のフリーランスがもたらすのは自由か格差か




どうも、SHU(@kitajimashuichi)です。

朝日新聞グローブの創刊10周年記念号というものに気になる記事が掲載されていましたので、自分用の記録を兼ねて紹介させて頂きたいと思います。

 

新時代のフリーランスがもたらすのは自由か格差か

企業や組織に属さず、ネットを通じて個人で単発の仕事をとる働き方が広がっています。ITに限らず、翻訳やマーケティング、法務、会計など職種も多様になってきました。AI(人工知能)の発達でさまざまな仕事が消えていく世界は、国境を越えてオンラインで人々が仕事を取り合う「フリーランス」の時代になるのでしょうか。

インドのデリーに暮らすマンミート・シンク・ライアットは高校卒業後、製薬会社に就職しましたが半年で退職しました。それ以来、独学で学んだウェブデザインやアプリの開発を企業や個人から単発で請け負うギグ・ワーカーとして働いてきました。

「ギグ」はライブハウスなどでミュージシャンたちがその場限りで演奏するセッションに由来する言葉で、フリーランスの中でも短期で働く労働者を指します。マンミートはクライアントと労働者をつなぐアメリカ合衆国の仲介サイトに登録し、主に欧米のIT企業からプロジェクトを受注しています。

会社員当時の給料は月額約250米ドルでしたが、今では2つか3つの仕事を請け負えば、数日で同じ額を稼げ、平均して月収は2倍になったとのことです。「会社にいた頃は自分ではなく会社のために生きている気分だった。お金は大事だけど全てじゃない。情熱を持って自分のやりたいことをやる方が大切だ」と語っています。

先進国の企業がIT分野などで人件費の安い新興国や途上国の会社に業務を委託することは1990年代から行われてきました。かつてと違うのは、ネットワークが発達したおかげで仕事を受ける側が企業ではなくマンミートのような個人に変わりつつあることです。先進国の比べて賃金が安いため、スキルさえあれば途上国のフリーランスの方が仕事を請け負いやすくなります。

インドではここ3年ほどで、ギグ・ワーカーが定額でオフィスとして使えるコワーキングスペースが急増しました。2015年にニューデリーの中心地コンノートプレイスで開業した「Innov8」(イノヴェイト)はムンバイやベンガルールなど主要都市で次々とオフィスを展開しています。

古いビルのワンフロアにあるコンノートプレイスのオフィスを訪ねると、カフェにあるような木製の長机で、PCやタブレットを広げている人たちがいます。奥のスペースでは、男性2人が仕事の合間にサッカーのテレビゲームを楽しんでいます。自由で柔軟な働き方は、もはや先進国だけのものではないことを実感させられます。

広報責任者のシュラダ・サンナルは「多くの貧困層がクラス国にとっては、地球が一つの村のようにつながってオンラインでどこの国の仕事も取れるようになるのが理想だ」と話します。


ニューヨーク・マンハッタンの東側にある高級住宅地アッパー・イースト・サイドでは正午を過ぎると、四角いバックパックを背負ったり、両ハンドルにナイロン袋を提げたりしながら自転車で行き通う人たちが増えます。

運んでいるのは周辺のレストランにオンラインで注文されたランチです。自転車を走らせるのはネットやスマホのアプリを通じて宅配を請け負い、注文主に届けるフリーランスです。

アメリカ合衆国は10年にサンフランシスコで始まった配車サービス「ウーバー」をはじめ、労働のギグ化が最も進んだ国の一つです。飲食店のオンライン出前サービスも今や配車と並ぶ代表的なギグ・ワークになっています。

仕事は自分の好きな時間に好きなだけし、ネットのおかげで実現した働き方は当初、労働者に自由を与えるともてはやされました。しかし、ここに来てアメリカ合衆国やヨーロッパの先進国で顕在化し始めたのは、社会保険や最低賃金が適用されないギグ・ワーカーの不安定な労働環境と、新たに生まれている格差です。2月にイギリス政府が公表した報告書によると、イギリスにいる約280万人のギグ・ワーカーのうち、25%は最低賃金以下の時給で働いていました。

「テクノロジーが発達して個人が簡単に仕事を請け負える環境ができたため、独立して働く人が増えています。ただ、仕事を選べて高額の報酬を得られるフリーランスは一握りしかいません。大半は家計を埋め合わせるために働いています。」全米で約40万人が加入するニューヨークの労働組合「フリーランサーズ・ユニオン」の事務局長ケイトリン・ピアースによると、それでも昨年だけで5000人が新たに組合に加わったとのことです。アメリカ合衆国では2027年にフリーランスが会社員を上回るとの予測もあります。


将来もし、インドのサンナルが言うように地球単一の労働市場が実現すれば、先進国と途上国の労働者が仕事を奪い合って対立することにならないでしょうか。

オックスフォード大学インターネット研究所准教授のヴィ理・レードンヴィルタは楽観的です。「ギグ・エコノミーから最大の恩恵を受けるのは途上国の中流層です。しかし、すべての仕事がギグになるわけではないし、同じ国にいるフリーランスを好むクライアントは必ず存在します。」しかし、同じ質問をニューヨークのピアースに聞くとレードンヴィルタとは対照的な厳しい表情でこう答えました。「先進国の労働者にとっては相当厳しいチャレンジになります。」