どうも、爬虫類ブロガー“SHU”です。
近年、飼育動物に関する「環境エンリッチメント」という考え方が広がっていますが、それは爬虫類・両生類においても例外ではありません。爬虫類・両生類の環境エンリッチメントといえば飼育環境などの「空間エンリッチメント」についてばかりが様々なメディアで取り上げられ問題視されていますが、爬虫類・両生類に関する環境エンリッチメントはそれだけではありません。この記事では環境エンリッチメントの中でも「採食エンリッチメント」に焦点を当てて、昆虫食爬虫類へのピンセット給餌について書きたいと思います。是非参考にしてみて下さい!
はじめに:環境エンリッチメントについて
環境エンリッチメントとは、動物の福祉と健康を改善するために飼育環境に変化を与えることによって飼育動物に刺激や選択の余地を与え動物本来の望ましい正常な行動の多様性を引き出すこと、刺激不足の環境において動物本来の適切な行動と心的活動を発現させる刺激を与えることなどと定義され、飼育環境に対して行われる工夫のこと全般を指します。
飼育動物の活動性と行動の多様性を高め野生と同様の行動を引き出し、望ましくない異常な行動を減らし環境の肯定的な利用を増やすことを目指して行われ、飼育動物の福祉を向上させる最も強力な手段のひとつとされています。
採食エンリッチメントとは
環境エンリッチメントの試みはその方法によって「採食・空間・感覚・社会的・認知」などにに分類されますが、その中でも採食エンリッチメントは餌の種類や与え方を変えるなど食物に関連するエンリッチメントです。
多くの時間を採食に費やす野生動物と比べて、餌を飼育者から与えられる飼育動物は採食行動の時間が短く行動の種類も少なくなります。そこで、それを補うことを目的とした採食エンリッチメントが行われています。おもしろいことに多くの動物はたとえ容易に得られる餌があっても、労力を要する方法を好んで採食します。この現象はコントラフリーローディングと呼ばれています。
昆虫食爬虫類へのピンセット給餌について
採食エンリッチメントは様々な飼育動物に広く行われその種類も多いですが、今回はヒョウモントカゲモドキなどの昆虫食爬虫類へのピンセット給餌を例にあげて紹介したいと思います。
昆虫食爬虫類への給餌はピンセットの使用が推奨されている
基本的にヒョウモントカゲモドキなどの昆虫食爬虫類への給餌は、ピンセットを使用して与える方法が様々なメディアで推奨され紹介されています。
これは現在主流となっている生餌昆虫が肉食傾向の強いコオロギであり、バラマキ給餌だとペットである爬虫類を齧ったりして怪我させる可能性がるため確実に食べる分だけ給餌を行うためです。またピンセットで給餌を行うことによって給餌量の確認ができたり、人工飼料への切り替えがスムーズに行えるなどのメリットもあります。
ピンセット給餌にはデメリットも…
しかしその一方でピンセット給餌だと捕食時に怪我をさせてしまったり、自然下で本来行うはずの採食行動は必要がなくなってしまい行動量やその種類も激減し、シェルター内に引きこもりがちになってしまい爬虫類本来の望ましい正常な行動の多様性を閉じ込めることになります。行動の種類が減ることによって爬虫類が本来持っている野性味を味わうことができませんし、行動量が低下することによって肥満になりやすく短命で一生を終えやすいということにも繋がります。
また餌を決まった時間に与えていると、給餌時間が近ずくにつれて異常な常同行動を起こすようになります。爬虫類飼育者は、よくこの異常な常同行動を懐いているなどと勘違いしがちです。基本的に爬虫類は人に懐くことはありませんので、本来であれば予防しなければいけません。
これらの問題を解決するためには?
これらの問題の解決策として、生餌昆虫に草食傾向の強いレッドローチを加えるという方法があります。我が家では肉食傾向の強いコオロギは様々なメディアでも推奨されている通り怪我予防も兼ねてピンセットで与えていますが、レッドローチはバラマキ給餌を行なっています。草食傾向の強いレッドローチであればペットの爬虫類を齧って怪我させるという心配もなくなりますし、バラマキ給餌なので採食行動も行い行動量やその種類も野生に近づけることができ同時に餌の種類も増えることになります。
給餌前の異常な常同行動に関しては、餌を不定期で与えることによって改善することができます。バラマキ給餌だとヒョウモントカゲモドキが食べたいときに食べたい分だけ不定期で採食行動を行うことになりますので、そういった点でもバラマキ給餌は効果的です。
まとめ
飼育動物全般に言えることですが、みんなが飼っている方法・やっている方法が必ずしも正解だとは限りません。というより、動物の飼い方にむしろ正解なんてないと私は思っています。しかし、より自然に近い環境・方法で育ててあげた方が良いことには間違いはありません。とくに爬虫類・両生類などはより自然に近い環境で飼育した方が、生体が本来持っている活動や魅力を最大限引き出すことができ、それは健康にも飼育の楽しさにも繋がると思います。
世話が楽などといった理由で推奨されている飼育方法は、合理主義な人間が勝手に考えた手抜きの産物です。合理性に流されて生体が本来持っている魅力や、その本質を見失いがちです。効率的な飼育の行き着く先は死なないだけの管理です。それを飼育とは決して言えません。みなさんも爬虫類飼育の常識とされている情報を疑い、環境エンリッチメントについて考えてみてはいかがでしょうか。